Tuesday, May 04, 2010

真光とスワミ・ラーマ <7>;ラーマは『聖者』だったのか。 Mahikari and Swami Rama < 7 > ; Was Rama a 'saint'?

崇教真光は、真光の教祖であり、世界真光文明教団を創設した岡田光玉(本名:良一)の経歴隠蔽・経歴詐称をし、己(崇教真光)の創設者である『娘』の恵珠の経歴さえ隠蔽して来たわけですから、スワミ・ラーマと名乗る人物について教団がきちんとした情報を信者に伝えることがなくて当然でしょう。『ヨガの(大)聖者』とだけ言っておけば、後は信者が肉付けしてくれます。真光信者は、この人物がどこの誰とも知らなくても、肩書きだけで、「どこかの偉い聖者が真光を認めてくれているんだ、真光は凄いんだ ...」と教団の思惑通りに受け止めます。偉い肩書きの人が祝辞を述べた、祝電を送って来た、と自慢し、だから真光は世間にもその素晴らしさが認められているんだ、と勝手に解釈して、世間知らずを暴露する信者もいます。真光に取り込まれた人達が真光の枠にはめられて、教団に都合の良いように物事を解釈してしまう、ほんの一例でしょう。

光玉からして、『ヨのみ役』などという、さも重大な役のように聞こえるけれど、実際の現実世界とは何の関係もないような役を神から与えられたと宣言し、天杖という一種の占いの儀式に加えて、大峰老仙、塩谷信男博士という名を挙げ、己の宣言の根拠が裏付けられたかのように聞こえるようにしました。これらがどういう人物であるかについてはきちんと説明がありません。研修や研修テキストで名は出て来るけれど、「この二人は一体誰ですか」などという質問が出たためしはありませんでした。 もっとも講義中に質問は受け付けないことになってはいましたが。<どこかの偉い人も『ヨのみ霊』について予告していたのか。それが光玉だったというわけか>と光玉の主張の裏付けのように聞いてしまい、それで納得した気分にさせられ、それ以上疑問を持たないのが真光信者でした。

大峰老仙の方は偉そうに聞こえるけれど、はっきり言って架空の人物と言ったところです。「架空じゃないぞ。神霊だって実在するんだ」と主張する信者もいるでしょうが、それと知らずにオカルトの世界にいることを示しています。塩谷氏の方は実在の人物ですが、自分の受けた『神示』が光玉を指していると認めたわけではなく、真光とは別の人生を歩んできました。〔注1〕こういった現実を考え合わせてみると、光玉が勝手にこの二つの名を利用したという見方が成立します。

スワミ・ラーマと名乗るヨガ行者は実在しました。『御対談集』の中で光玉がこのヨガ行者について話してもいます。しかし、このヨガ行者が、『ヨガの世界最高峰の人』(p231)『ヨガの方では世界で今一番の師匠になっている』(p306)『世界のヨガの一番の親玉』(p232)というのはおおげさで、現実のことではありませんでした。〔注2〕 その上、『どんな病気も治せる』(p306)とか、『見て居る前で自分の身体を消しちゃうとか、じっと坐ったまま三尺くらい身体が地面から上がっちゃうというようなことまでできる』(p312)等、相当疑わしいことを、自分で確かめたわけでもないのに、確信を持って言っています。〔注3〕もっとも、ラーマのこれらの『能力』が現実のものだったのかどうか、光玉にはどうでもいいことだったのかもしれません。「『世界最高峰』のヨガ聖者が、オレとオレの真光に感心したんだぞ。だから真光って凄いんだぞ!」と自分の信者に吹聴すればそれでよかったのでしょう。究極的には、自分と自分の真光を宣伝するのにこのヨガ行者を利用したと言えるのではないでしょうか。

ではラーマ側はどうかと言えば、アメリカへ向かう途中、日本に寄り、日本の一新興宗教の教祖と知り合いになったわけです。この教祖は天下を取らんばかりの勢いの話をします。『神(真)の光』『全人類救済』『地上天国』『霊的昇華』『病気が治る』『奇跡が起きる』等、華々しい表看板語句を聞いたことでしょう。 周りの信者達は、光玉を信じ切っているようです。また、光玉の持ち上げぶりに、ラーマも気分を良くしたのかもしれません。「よ〜!ヨガのおっさん!世界 一!」などと光玉から声をかけられていたかもしれません。

ひょんなことから新興宗教の教祖と出会ったこのヨガ行者は、この宗教が「新興宗教」であるという認識はなかったでしょうし、真光の派生した元である世界救世教のことも、そこで行われていた浄霊のことも知らなかったでしょう。ましてや、光玉が世界救世教の元信者であり、給料をもらう幹部さえ勤めていたこと、真光を始める前にそこで手かざししていた、という経歴も知らなかったでしょう。光玉もそこのところは言わなかったようです。〔注4〕1959年に突然『神』の啓示が下りて、『ああせよ、こうせよ』と言った、との光玉の話は本当らしく聞こえたのではないでしょうか。

アメリカへ渡ったラーマにとって、日本の宗教の『指導者』と知り合いであるということ、日本でヨガを教えたということで、彼の経歴にもプラスの効果があったと考えられます。

光玉との結びつきは、個人的なものであって、光玉の創設した世界真光文明教団との結びつきではなかったようです。光玉の自宅に泊まったラーマは、『娘』の恵珠とも知り合いになったわけです。光玉の死後は、恵珠の客として崇教真光の祭典に招待されました。独特の衣装をまとった、体格の良い、このインド人の姿は祭典に『花』を添える存在でしたし、このポストの最初に書いたような効果が真光信者に対してあったわけです。ラーマ自身も『み祭り』に出席すれば来賓扱いですから、特別待遇の接待を享受したことでしょう。時に頼まれるリップサービス(=祝辞)もいとわなかったことでしょう。逆にスポットライトを浴びることで自己顕示欲を満たしたのかもしれません。

さて、このヨガの行者は、1993年にインドに病院施設を建設して、点数を稼いでいるようです。しかし、この人物には、実は陰湿な、秘密の面があったようです。

1997年、ラーマによる性的不正行為に対し、ヒマラヤ研究所は被害者である元研究所居住者の女性に180万ドル支払うべしという判決がぺンシルベニアで下りました。〔注5〕このヨガ行者は前年に亡くなっていますが、彼の設立したヒマラヤ研究所は1979年以来、10人以上の女性がこのグルによる性的虐待を訴えたにもかかわらず、何の対処もせず、無視して来た、ということがあるようです。

このグルによる性的虐待・性的搾取は1970年代の早い時期からうわさになっていたようです。自分の設立したヒマラヤ研究所の敷地内に集まって来る弟子や信奉者はもとより、各地の弟子や信奉者にはラーマは絶対の権力者でした。その権力者の不埒な行為を沈黙という決まりを破って表沙汰にすることは困難で、心理的負担が大きく、ほとんどの女性被害者は泣き寝入りしたのではないでしょうか。

遂にあるジャーナリストがこの問題を取り上げ、2年間調査し、1990年にヨガ雑誌に報告しています。〔注6〕 数人の女性の体験談を通して、このグルが絶対的権力の地位を利用して、どのように女性に言い寄り、己の欲望を満たしたか、このグルの行為がどのように隠されて来たか、その様子がわかります。彼のこのような行為が絶対権力者の地位を利用したセクハラであることさえ被害者本人は認め難く、「これは(霊的)テストなのだろう」「自分が何かを学べるようにこんなことをするんだろう」等、グルが絶対者であると信じる故にグルその人に疑問を持つことが出来ず、自分を責めたり、妙なこじつけをして解釈しようとしました。さらに本人のみならず、研究所の人間達や家族を含む周りの者達でさえ、「グルの行為には自己愛は一切含まれず、すべてメンバーの利益のためにやることである」といった大前提が固定されていて、グルの行為を客観的に見られなくなっているし、見ようともしない様子がわかります。研究所側は、「彼の淫らな行為など存在し得ない。だから、被害者が嘘をついているのだ。または被害者のファンタジーである」と一方的に決めつけ、被害者を悪者にしてその訴えを拒否し、グルを守って来ました。グルにとってやりたい放題の環境だったということです。研究所は一種のカルトであるということも示唆しています。

このグルの不埒な行為のスキャンダルについて、ある人は、「これは我々皆にとって大きなテストである、研究所にとっての浄化である」と言ったそうです。真光流で言えば、『神振るい』にあって、組織についていけないものは離れ、組織が浄化する、ということです。『完璧である』グルやそのグルの設立した研究所に疑問を持つ者、不利なことを言う者には脅迫状が届くというのも珍しいことではなかったようです。

スワミと呼ばれる者はそもそも、心身の制御をマスターした者であって、正しい生き方をする見本であるはずで、しかも、独身を誓うインドの僧侶だそうです。ラーマも独身を誓ったはずだそうです。しかし、このスワミには、インドに妻子がいました。さらに、もう一人、このスワミの息子であると明言する人がアメリカにいます。〔注7〕 母親はラーマが渡米した初期の頃の彼の性欲の被害者の一人でした。その息子が、グルとして崇められた人生と詐欺師の人生との二重の人生を生きた父親スワミ・ラーマのことを母と共に回想しています。彼自身がこのヨガ行者の隠された面の生き証人であり、彼の話も1990年のジャーナリストの報告を裏付けていると言えます。

キャサリン・ウエブスター女史の報告をここで詳しく紹介していられないのが残念です。ラーマの隠された、暗い面は性的虐待・性的搾取だけではありません。そこに浮き出されるこのヨガ行者の姿を日本の読者の為にある程度紹介しましょう。

《勝手気ままにひどい行為をする暴君。えこひいきが激しい。冷酷。特に女性に対しサディスト的取り扱いの態度を取る。〔注8〕 自分の意のままにメンバーを結婚させたり、仲を裂いたりする。〔注9〕 タバコは吸う。毎日数時間もテレビを見る。人の噂話が大好き。人の心理を巧みに操作し、脅したり丸め込むのが上手のようである。口達者であるが、自分の言うことに忠実であるわけではない。〔注10〕 真珠のネックレスを実際の価値の3倍の値段で彼から売りつけられた元メンバーの話がある。1971年に彼の為に幻覚剤を含む不法な麻薬類を入手したという元弟子の証言もある。また、公の経歴の中には確認出来ない部分があり、捏造も含まれていると見ている。》

このジャーナリストと彼女の取材に応じてその体験を語った人々、また、ラーマの設立したヒマラヤ研究所を相手に、裁判に持ち込んだ女性の勇気に敬意を表したいと思います。また、自分の体験を語ることによって、真理追究の資料を提供したロバート・ウオルター氏にも敬意を表したいと思います。

こうして見て来ると、スワミ・ラーマなる人物は、ヨガの達人ということで、自分が頂点として君臨する権力構造を築き、表向きと違って、そこでは相当好き勝手な振る舞いをしてきたようです。彼の支配下に入った者には恐れられもし、一部の人々には『神』としても崇められたようですが、真の姿は『大聖者』どころか『聖者』の姿からはほど遠かったと言えそうです。

このヨガ行者と光玉とが気が合ったというのも、偶然のことではなかったのでしょう。



〔注1〕『岡田光玉の借金返しの件について(その2)』(2008/07)
〔注2〕『真光とスワミ・ラーマ <3>』(2009/07)
〔注3〕『真光とスワミ・ラーマ <2>』(2009/06)
〔注4〕『真光とスワミ・ラーマ <3>』(2009/07)
〔注8〕ある女性(彼女は研究所の学生だった。「前世で一緒だった。今生で再会を待っていた」とラーマに言い寄られたのが始まりで、彼に弄ばれていった)の証言 ー 女性の門下生に向かって怒鳴る、あざける、こき使う、など、日常的だった。四つん這いになって除草している女性のおしりを蹴ることも時折りあっ た。また、おとなしい女性に自分の犬の首輪をはめ、歩かせて、笑いものにしたこともある。さらに、女性の門下生に草の根を抜かせたが、毒のツタの根であることはわざと教えなかった。あとで彼女達の多くは全身が腫れ上がり、苦しんだ、等。

周囲の者達は、彼のこうした振る舞いにどうして問題意識を持たないのか。彼らにとってラーマは完璧で、絶対権力者。女性達は気紛れなラーマに一生懸命仕えようとしたのだそうだ。「自分達には理解出来ない、偉大な意図があるのだ、一般の道徳とか評価を超えた存在だ」という概念があるために、現実の実態をありのまま認識出来なかったようである。

〔注9〕ラーマは自分が手をつけた女性に結婚相手をあてがうこともしたようである。彼の手配で結婚したが、結婚後もラーマに迫られていたという女性の話もある。
〔注10〕セクハラの対象にした女性に「インドやヨーロッパに一緒に連れて行ってやる」「遺書に君の名を入れてやる」等、実際にはやりもしないことも平気で言ったようだ。


ーー火の鳥Phoenix3000